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空白の思い出

  • 講師
  • 2019年6月25日
  • 読了時間: 2分

8年前の3月11日、朝日アマ名人戦の全国大会で私が東京入りしたときに一緒に会場のホテルに居合わせた当時中学生の子と天童で再会しました。

あの日の事は今でもよく覚えており、交通機関が麻痺した中、ただニュースを見ることしかできませんでした。


私は津波のことをニュース映像が流れて知る前に1,2局その子と対局していました。

母親に付き添われてまだあどけなさの残る中学生でしたが、奨励会志望であることや地元の四国から通うことの大変さを受け入れた上での将来の話、師匠の話などを彼の母親を交えて聞きました。

正直、当時はまだ私とまともにやり合って勝てそうになかった彼ですがその後、決して早いとは言えない14歳で奨励会に入会した彼の名前を将棋世界やインターネットでときたま見るようになりました。

星取り表からは苦戦していることが容易に見て取れたけれども少しずつ昇級を重ねて退会時には初段まで上がっていました。


"彼"が1勝1敗で迎えた予選の3局目の相手は愛知県代表の竹内さん。私が平成最後の日に対局した相手でもあり、最近まで石川県におられましたが仕事の関係で愛知からの出場となったようです。

この組み合わせに私以上に興味を持って観戦していた人はおそらく他にいなかったと思います。


序中盤から竹内さんの丁寧な指し手が光り終盤の入り口までに不敗の大勢を築きます。しかし、竹内さんがさらなる優位拡大を狙うその後の指し手をことごとくいなして決定打を与えない"彼"の執念とセンスには鳥肌が立つ思いで見守っていました。

反撃に転じてからは相手のミスを誘発する急所の攻めをノータイムで指し続け、少しずつ形勢を盛り返していく様はまさに圧巻で、精彩の欠いた中盤とは逆に終盤に入ってから加速度的にスピードを増していくコントラストには形容が難しいとすら感じました。


しかし、中盤で優位を築いた分の貯金が残っていたことと丁寧な受けの読みによって最後は竹内さんが勝ちました。


彼がどんな奨励会時代を過ごしてきたのか私にはわからないけれど、会うことのなかった空白の8年間について彼の対局を通して少しだけ見ることができた気がしました。

いつか手合わせすることがあったら、彼の終盤について行けるように努力したいと思いました。


 
 
 

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