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将棋における幸福論

  • 講師
  • 2022年7月27日
  • 読了時間: 3分

幸福論において功利主義という考え方がある。

幸せの度合いを数値化することは難しいが、仮にそれができたとして個々人の幸せの数量の合計(=社会全体の幸福度)を最大化することを最適解とするものである。


将棋はゼロサムゲームである。勝者がいれば敗者がいる。

勝者が何か得ることのできる試合においては何も得られない敗者がいる。


アマ大会の県代表になった時に私がよく考えることはそれによって他の誰かのイスを奪ったということだ。自分でなければ他の誰かが得たであろう権利やポジションについて自分がそれを得ることに特別な意味はないのだと思う。そのときたまたま自分が座ることができただけだ。


アマとプロでは程度の差はあれ本質的には変わらない。タイトル戦はスポンサーが提供してくれる資金を棋士同士で奪い合っている。


奨励会は本当に無駄の多い制度だと思う。何年もかけて戦わせる割にそこを抜けられる人の数には限りがあり、多くの奨励会員の時間と労力がもったいないように感じられる。

(いつか奨励会制度の非効率性についての経済論文を書きたいと本気で思っている。)


私自身、何を目指しているかと聞かれるともう10何年も前からアマ大会全国優勝と答えているが、その意味が自分でもわからなくなるときがある。全国大会優勝経験者に勝つことと全国大会優勝することは別物であることをここ10数年で身をもって感じた。

そこに自分の時間とエネルギーを今まで以上に費やすことはできなくもないが、その結果得られるものが自己満足以外の何なのか考えたときに自分自身の棋力向上より普及に力を入れる方が本質的な価値(経済学でいうところの誰かの”効用”)があるような気がしている。


正直言って今のところ自分自身の棋力に衰えや限界は全くと言っていいほど感じていない。自転車の乗り方を一度覚えたら忘れないのと同じで将棋は簡単には弱くならないことを知っている。


人は自分の幸せに満足できないと他者の幸せについて考える余裕のない生き物だと思う。

週5、週6で毎日10時間働いて休みが殆んどない、みたいな生活で他人を思いやれることは難しいと思うし、わずかな休みは自分の事しか考えられない、自分が楽しむ方法とかしか。


だからこそ自分の幸福を最優先に考えた先に他人の幸福があるのだと思うし、誰かを幸せにしたければ自分が幸せになることが一番の近道だと思っている。


将棋について言えば、自分の棋力にある程度満足できていないと他者を思いやることができないのではないかと思う。


強くなった先に何があるのか、その人自身もわかっていないものだと思うけれど、“強くなることだけに集中する“という状態はある意味では思考停止の状態であると僕は思う。


そこに自分の居場所を求め続けるのは社会からの逃げであるとも思うし、格好悪い。


将棋が社会的に広く普及していてそこに流れる資本も十分にあるのであればそういう考えの人が一部いても良いと思うが残念ながらそうはなっていない。日本将棋連盟が最近いろいろとクラファンをやっているのがその証拠でもある。


棋力を維持できていることから来る自信は普及活動に力を入れられることの源泉でもあるので依然として大事にはしたいけれど、自身の棋力についてある程度はもう満足しているのでエネルギーの使い方としては普及に費やした方が率がよいと考えるようになった。


50人の大会で優勝するより100人の大会で優勝する方が嬉しいように、これは自分自身の承認欲求を満たすためでもある。だとしても普及が人に喜ばれることであり誰も損しないならば、自分とその他大勢の誰かの利益のために自分にできることをやりたいと思う。


将棋人口が増えたら他の遊戯人口が減ると考えたら、また功利主義の観点に立ち返って疑義が生じるが、これはこれで適正な競争なのだと思う。


 
 
 

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